精神障害者に対する支援制度は様々ありますが、手続きが大変なのは障害年金です。
私の妻は、精神病の双極性障害を発症し、入院と退院を経て、障害厚生年金2級の認定を受けました。
今回は、なかなか受給するのが難しいと言われている障害厚生年金の申請から受給までを解説します。
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障害年金とは
病院やケガによって生活や仕事が困難となった人に対して給付される年金です。
年金と言って最初に思いつく老齢年金とは異なり、要件を満たせば定年前の現役世代も給付されます。
障害基礎年金と障害厚生年金
国民年金に加入している人は「障害基礎年金」(俗に言う、1階部分のみ)、厚生年金に加入している人は「障害厚生年金」がもらえます。
さらに障害厚生年金のうち、障害等級(障害の状態を表し、1級が1番重い)が1級と2級の人は、「障害厚生年金」に加えて「障害基礎年金」ももらえます。
老齢年金と同じく、障害厚生年金の方が給付が手厚くなっています。
障害者手帳があれば障害年金ももらえる?
障害者手帳があっても障害年金をもらえないことはあります。なぜなら障害年金の申請において、両者は関係がなく、障害者手帳の有無で障害年金の支給の判断がされることはありません。
障害者手帳は、医師の診断書があれば、簡単にもらえますが、障害年金はこのあと紹介する受給手続きで、日本年金機構から細かく審査されます。
ただし、障害年金の提出書類に障害者手帳(持っている場合のみ)があるので、持っていたら良いのかもしれません。
年金額
どれくらいもらえるのか気になると思いますのでさっそくお伝えします!年金の受給額(年額)はこちら
約195万円(約16万円/月)
私が想像していた額よりも多いのは、子どもが2人いる分の加算(223,800円×2人=447,600円(年))があったからです。その加算を除くと少ないなと思いました。原因としては、妻が産前休暇の1年前に社員から準社員に希望降格したため、給料が減ったためでした。
年金額の算定基礎には、直近の給料額が使用されるため、仕事をしなくなった(できなくなった)時点での給料が多いほど年金額も多くなります。(当然、等級が上がるほど、子どもが多いほど年金額が多くなります。)
受給手続き
受給までの手続きについて解説します。次のように進めていくと良いでしょう。
- 受給要件の確認
- 初診日と障害認定日の確認
- 障害等級の確認
- 年金事務所への相談
- 主治医への相談と依頼
- 申請書類の準備
- 申請
順番に見ていきます。
1.受給要件の確認
かなり細かいので、日本年金機構のホームページをご確認ください。
2.初診日と障害認定日の確認
初診日は、精神障害についての体調不良で医療機関に初めてかかった日のことです。
障害認定日とは、初診日から起算して1年6ヵ月が経過した日のことをいいます。この日まで症状が継続(またはすでに治癒)していることを確認します。そして、この日以降に障害年金の申請ができます。
3.障害等級の確認
障害等級により年金額が変わってきます。障害等級に相当する症状なのか確認しましょう。確認方法は日本年金機構のホームページを確認してください。まくまでも目安なので、認定されるされないは個別に判断されます。
そして、あとに説明する「病歴・就労状況等申立書」という申請書類に障害等級に応じた内容を記載しますので、目標(受給予定)となる障害等級とあまり差が出ないようにしましょう。
4.年金事務所への相談
予約
住所地を管轄する年金事務所に申請前に相談します。電話またはインターネットで予約できますが、半月から1ヵ月先まで予約が埋まっていることが多いです。余裕をもって予約しましょう。
予約時には患者の基本情報に加えて基礎年金番号が必要になりますので、年金手帳等を用意します。
また、障害認定日(障害年金の申請ができる日)よりも前に相談することができます。
窓口相談
予約日になったら以下のものを持参して窓口に行きます。
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 年金手帳
- 初診日がわかる書類(クリニックの領収証など)
- 通院している病院がわかる書類(病院の領収証など)
- 障害者手帳(持っていれば)
担当者の方から年金制度等の説明がありますので、申請に必要な書類や申請時期などを確認します。案内にしたがって手続きを進めていきます。
5.主治医への相談と依頼
主治医に障害年金の受給のため診断書を書いて欲しいことを伝えます。
妻の場合は、医療保護入院時からずっと診てもらっている主治医なので話が早かったです。主治医が言うには、産褥期精神病(さんじょくきせいしんびょう)と診断書に書くと症状が長引かないと日本年金機構側に判断されて、年金を受給できない可能性があるため、この時点で双極性障害であると診断されました。
6.申請書類の準備
窓口相談時に担当者の方から用意するよう言われた書類を準備します。日本年金機構のホームページにチェックリストがあるので参考にしてください。
妻の場合は、次のとおりでした。
- 年金請求書
- 病歴・就労状況等申立書
- 戸籍謄本(患者本人分)
- 患者の預金通帳、またはキャッシュカー
- 診断書(令和4年7月5日(障害認定日)〜令和4年10月5日の症状の診断書)
- 受診状況等証明書
- 障害者手帳
- マイナンバーカード(子どものもの)
この中で患者が自らの手で自身の症状を伝えられるのは、病歴・就労状況等申立書のみです。症状をしっかりと日本年金機構に伝えましょう!
ここで役に立ったのが、私が記録していたメモでした。医療機関に説明するため、入院前の妻の症状をメモに取っていました。
障害認定日が初診日の1年6ヵ月後なので、不調や発症日はこれよりも過去になります。すると、1年半〜2年前の状況を思い出すのも大変です。
さらに、患者は、躁状態のピークにあるときの記憶がないことが多いです。
したがって、メモをずっと保管していたおかげで、スムーズに記入できました。
ポイントは、なるべく具体的にどんな状態だったのか?何ができなくなったのか?何をしたのか?どんな社会生活上の支障があったのか?を書くことです。
診断書の封筒は開封しても良い?
診断書を依頼すると封筒に入れられ、開封無効の印がある場合があります。しかし、病歴・就労状況等申立書の中で、診断書の内容を確認してから記入する項目があるため、開封する必要があります。日本年金機構の担当者の方に相談した後、開封しても良いと言われたため、開封しました。
7.申請
申請先
住所地を管轄する年金事務所
申請方法
予約後、窓口に提出
受給後の手続き
申請から3ヵ月以内に受給の要否が決定されます。無事に受給が決まれば、障害認定日から現在までの年金が指定した口座に振り込まれます。また、偶数月に前月と今月の2ヵ月分が振り込まれます。
ここで、ホッとしますが、あともう少しだけやることがあります。
老齢年金を納めるか否か
障害年金の受給相当の状態が続けば、ずっと障害年金を受給できますが、65歳になったら障害年金を継続して受給するか老齢年金を受給するかを選択できます。
それまでの期間は、国民年金保険料の全額免除(障害等級が1級と2級のみ)です。法定免除と言います。
したがって、年金の保険料を納めなくて良くなるのですが、老齢年金は任意で納めることができます。
納めるメリットは、老齢年金の納付期間が長くなるので障害年金よりも受給額が多くなる可能性があることです。
デメリットは、もしも老齢年金の受給額の方が少なかったときでも、任意で納めた保険料を返してもらえないことです。さらに、老齢年金は所得税の課税対象であることもデメリットです。
どちらが多く受給できるかは、人によって違うので年金事務所に相談しないとわかりません。
しかし、老齢年金をとり巻く環境が悪化していくのは明白なので、仮に老齢年金の受給額が多いと計算できても、受給する何十年後には少なくなることも予想できます。
妻の場合は、障害年金の方が有利であると考え、老齢年金の任意納付はしませんでした。
額によっては扶養から外れる
会社にもよりますが、扶養手当の対象から外れることがあります。勤務先に問い合わせましょう。
期限があるため更新する
精神の障害年金には期限があります。精神病は治癒や軽減する可能性があるからです。したがって、それらの場合は、支給停止する必要があります。おそらく手続きをしない人が多いので、精神の障害年金は更新制をとっています。
妻の場合は、2年で更新しました。期限になる前に日本年金機構から案内が届きますので、それに従い書類等を送付します。基本的には医師の診断書です。主治医が変わらなければスムーズに手続きできます。
障害年金の手続きの問題点
ここまでが障害年金の一連の手続きでした。やってみて思ったことは、1人での手続きは大変だということです。
育休中の私ですら、妻と一緒に手続きするのが面倒くさかったです。ましてや双極性障害の薬の効果で、外出する気もおきない、やや鬱(うつ)状態の妻が1人で手続きできるとは到底思えません。
妻の場合は、私が常に一緒について行って受給まで至りましたが、サポートしてくれる人がいない患者さんは途方にくれてしまうかもしれません。
そんな患者さんのために障害年金の申請をサポートしてくれる団体や社労士さん、行政書士さんがいることも納得です。
精神障害年金の受給が難しいと言われる理由は、手続き自体は難しくないけれど、以上のように面倒くさくなって諦めてしまうからです。
まとめ
障害年金の申請は他の手続きに比べて大変です。なので途中で諦めてしまうかもしれません。
しかし、一つ一つの手続きはそこまで難しくはありません。無理せず自分のペースで確実に進めていけば必ず申請までできます。
どうしてもできない場合は、周りの人に頼るのも良いでしょう。障害年金は、受給できると非常にメリットが大きいものなので、支援団体などにまずは相談してみましょう。